謝罪の贖罪で冷静スープ

枕も布団もない。

 

畳の上で毛布一枚を羽織って丸まっている。

 

そのまま横たわって天井を眺めると、微かに照らす黄色い光すらなくて、ただ真っ暗な部屋で静けさが私に味方する。

 

不思議と不安や恐怖はない。

 

ただ寒いし、硬いし、冷たい。

寒さは眠気を誘う。

 

このまま、あの世にいけたなら。

 

 

何をしたらいいのかわかりません。

何がしたいのかもわかりません。

 

言いたいことはわかります。

 

自分のやりたいことなんて他人に聞いてもわからないってそんなありふれたことを言うんでしょ。

 

もう何をして生きたらいいのかわからないくらい、おかしくなってしまいました。

 

教えてください。

生きる意味って何ですか。

 

楽しいことを見つけたいです。

 

 

 

 

隣の家のポチとタマ。

もともと少食だから、1日1食、味噌汁一杯で事足りる私の身体は、過度なストレスの積み重ねによって、何を食べても飲んでも吐いてしまうほどに、食事を受け付けなくなってしまった。

身長は低めだから見た目的な問題はないけれど、体重が36キロまで落ちた時は、自分でも少し危ないと思ったくらい。

筋力を付けないとと思っても、体を動かす原動力はないし、布団から出ることすら億劫である。

 

夢を見た。

『生きていることに理由を見出す必要はない、生きたい理由を見つけるだけでいい』

昔、確かにそう言われた記憶がある。

けれどもう誰に言われたのかは記憶に無くて、モヤの向こう側のあの人は一体誰だったんだろう。

 

でもそうやって、記憶の中にいる"誰か"が私を救い出してくれる。

確かにその人はいて、以前仲が良かったとか、ゲームをした友人だとかその類だとは思う。

簡単なことからでいいんだって、例えば甘いものが食べたいだとか。

でも生きる気力がない私にはそんなもの何一つ思い当たらなくて、最初は誰かを真似るといいって言われたんだ。

そしたら自分の本当にやりたいことが見つかるかもしれないって。

 

半年に一度くらいしか話さないような友人に、よく自分のことを覚えているねと言われる。

本当は覚えてなんかいない。

一冊のノートがあって、それに全部書いているだけ。

どういう話をして楽しかったとか、どういうきっかけで知り合ったのかとか、好きな食べ物だったり、よく聞く音楽だったり、そういった積み重ねで私という人間が出来上がった。

 

やりたいことも好きなことも結局未だに見つけられなくて、誰かが興味を持った何かを私は真似てばかりいる。

 

ゲームが好きなあの人を見た。

だからゲーム機とソフトを買った。

母からギターを譲り受けた。

だからギターを弾いた。

軽音部にベーシストがいないと言われた。

だからベースを弾いた。

写真を撮ってと頼まれた。

だからカメラを買って写真を撮った。

幻想的な絵を見て涙が出た。

だから絵を描いた。

君の声が好きだと言われた。

だから必死に歌った。

彼女にネイルを勧められた。

だからネイルができるようになった。

手作りのお菓子やご飯を食べたいと言われた。

だから料理をした。

家に電子ピアノがやって来た。

だからピアノを弾いた。

 

しかしどれも、中途半端に終わった。

ピアノは始めたばかりだからやめてはいないけれど。

 

私の知らない誰かが、安易に死ねと口走ったとしたら、私はその通りにするんだろうと思うんだ。

誰かの不幸を背負えるほど強くはなくて、私という存在が誰かを傷つけてしまうなら死んで詫びたい。

それよりも先にもちろん謝るけれど、それでも生きていることすら許されないのなら、君の言う通りにしようかな。なんて。

本当にろくでもない死にたがりだ。

それにきっと、殺されない限り死にはしない。

死ぬことで迷惑をかけることを知っているから。

 

不謹慎だと言われるだろうか。

世の中に生きたくても生きられない人間がたくさんいる中で、死を渇望する人間がいるんだ。

私みたいな。

この世の不幸を全部背負ったみたいな被害者ヅラをして、けど本当の被害者は私に関わった人たちなんだ。

 

 

運命とか神様だとか。

本当にいるのなら人生ってなんなんだろう。

私の選択すら必然だというのなら、なぜ私は生きているんだろう。

この先何のために生きていくんだろう。

 

何のために生まれてきたのかとか、今文章を書き連ねていることすらも決まっていたことなら、それは私でなくてもいいんじゃないだろうか。

魂というものが本当にあるのなら、人間というのはただの器でしかなくて、隣の家のポチでもよかったわけでしょう。

私はなぜ人間であって、なぜ女であるのか。

なぜ戦争のない時代に生まれ、日本という国に生まれ、この場所で生きているのか。

 

その全てが、私にとっての疑問であり唯一の好奇心の矛先でもある。

思考や仮定は楽しい。妄想とも言える。

死後どうなるのかを知りたくてたまらない。

今この瞬間も時間は流れていて、絶望しながらも23年を生きた。

もうよくない?

 

生まれ変わりや前世や来世があるなら、次は隣の家のタマになりたい。

生きていればいいことがあるとか言うけど、それは最後まで生きた人間にしかわからないだろう。

私が今日死んだら、今日まで生きた人生は最悪だったって言うよ。

生きてたっていいことなんかないって。

 

いつもいつも、苦しかった。

喘息やアトピー性皮膚炎で周りから虐められていたことも。学校に通えないことも。通ったところでいじめられることも。

勉強なんてろくにしてこなかったし、いつも兄と比べられて、私は劣ってるんだってずっと劣等感に塗れていた。

身内に犯されて男嫌いが悪化しても、社会に出ればそんなことは通用しないし、感情なんて曖昧なものに身を任せれば、不貞行為が発覚して調停。

私自身、特別優れたところなんてないし、日々心は弱くなって卑屈になっていく。

以前は穏やかでいられたのに、今はずっとイライラしていて、すぐに周りに当たってしまうし、口も悪くなった。

そんな自分が段々嫌になってきて、好きになれなくなって、気をつけても気をつけてもしんどくてどうにもならなくて。

喋らないようにしたら何がしたいのかわからないって怒られて。

 

嫌なことばかり数えていたら、しんどくなって不安になってもうどうしようもない。

生きていることが嫌で仕方ないし、意味なんて自分で見つけることだけど、見つからないんだ。

話せる相手も全部手放した。

私が縋れば同情してくれる人は少なからずいるんだろう。

けれど私はそれで相手を壊したくない。

私が関わることで、依存させてしまったり、今ある家庭を顧みない人までいる。

そんなことして欲しいんじゃない。

ただ私は今の状況から救われたいだけなんだよ。

 

大丈夫だって言われたいの。

生きてていいって言われたいの。

何も出来なくても大丈夫って。

ただ何も言わずに抱きしめてくれるだけでもいい。

助けて欲しいの。

 

もう嫌なんだ。苦しみたくないんだ。

絶望なんて味わいたくないし、悲しくもなりたくない。

暴言が吐きたいわけじゃないし、周りに嫌な思いをさせたいわけでもない。

私のせいで誰も不幸にしたくないんだ。

どうしたらいいかわからないんだよ。

幸せにしたかったのに。周りの人たちが幸せであればそれでいいと思ってたのに。

自分も含めてみんな不幸なんて。

やっぱりあの時、私が死んでれば今みたいにならなかったんじゃないかって思えてならないんだよ。

誰かのせいに出来たら一番楽なのに、誰かのせいにすることもできないくらい、私自身が悪いことなんてわかってるんだ。

 

死にたいよもう。

生きてたくなんかない。

 

耐えて耐えて耐えて

一月分の生活費は渡さないと言われた。

彼が不貞行為に及んでいる間、私は自分の貯金を崩してやりくりして生活をした。

貯金はこの2年で底をついた。

 

年収600万以上ある男が、12月のボーナスもあったはずなのに、もう私の生活は保証しないと言った。

あれだけ私を軟禁して、外に出したがらず、バイトすらも行かせず、ただ家で大人しくしていなさいと言ったのに。

今になって最低限の生活すら保証する気はないらしい。

 

不貞行為が発覚してから、『私達が出て行くまで、この家に帰ってこないでほしい』と言った。

けれど彼は、タバコの香りを身に纏い、悠悠と帰宅し部屋に入る。

シャワーだけでいいと言った彼は、シャワーすら浴びず、洗面所で着替えてそのまま出てくる。

もう既にお風呂も済ませているのだろう。

わざわざ帰ってこなくて良いのに。

 

何もしていないのに、突然、不安感が私を襲って、息苦しくなったり、手が異常に震えたり、背中に激痛が走る。

 

LINEの文字、名前すら視界に入れたくない。

本当にただの恐怖でしかない。

 

最初から不安だった。

これからどうやって生きていけばいいのか。

 

振りかざされた手は私を脅すには十分だし、声すらも凶器だ。

私を踏みつけたり、首を絞めたり、それらは些細なことかもしれないけれど、私は嫌だったし、いくら何を言ったとしても、『悪意はない』という一言で私の気持ちは蔑ろにされた。

 

誰も彼もが、私に癒しを求めたり、相談に乗って欲しいと言ってきたりするけれど。

じゃあ私の癒しはどこにあるの。

甘えることも、癒されたいと願うことも許されないなら、この絶望をどうすればいい。

どこに吐き出せばいい、どこに捨てればいい。