17歩先の食物庫 〜9036〜

 

以前その板には、文字が書かれてあった

 

 

『全部、見えています』

 

 

別の日には

『お金以外のものを入れないでください』

 

また別の日には

『みかんの試食をどうぞ』

その横にはカゴに入れられた十数個のみかんがあった。

 

 

ある日、文字がなくなった。

 

 

代わりに複数枚の硬貨が貼られていた。


それらは1円玉や10円玉で、お金ですらないものまであった。

 

たった一枚の硬貨が何十枚と、日に日に増えていった。

 

とうとう貼る隙間もなくなった。

 

 

しばらくして、木の板はなくなった。

 

 

けれどそこには、新しい木の板があった。

以前と同じ、いや少し違う。

 

『全部、見えています』

 

その文字の意味に、一体誰が気付くのでしょうか。

 

言葉の捉え方は、人それぞれ違うようです。